墓石解体工事・墓所整地工事の費用の支払時期

 改葬や墓じまいを行うと、改葬元、墓じまい元のお墓について、墓石は解体撤去工事を行い、墓所、お墓を更地にして、いわゆる「なにも無い状態」にして、お寺や霊園などの墓地管理者に返還するのが原則です。

 このとき、改葬や墓じまいに伴う墓石解体工事や墓所整地工事の費用は墓地使用者、現在お墓を使用している人が負担して石材店さん、石屋さんに支払うのが一般的です。

 では、この改葬や墓じまいに伴う墓石解体工事や墓所整地工事の費用について、墓地使用者、現在お墓を使用している人は、石材店さん、石屋さんにいつ支払うことになるのでしょうか。

 専門の国家資格者である行政書士が解説します。

墓石解体工事や墓所整地工事は「請負契約」である

 まず前提として、この改葬や墓じまいに伴う墓石解体工事や墓所整地工事は法律上「請負契約」と呼ばれています。

 請負契約について定めた法律、民法(1896年(明治29年)法律第89号)第632条を見てみましょう。

民法(1896年(明治29年)法律第89号)

第632条
 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#2698

 このように、民法の明文で定められている、法律で定められている契約のことを法律用語で「典型契約」と呼びます。

 請負契約は民法第632条という法律で定められていますから、典型契約の一種になります。

 法律は難しい条文も多いですが、請負契約について定めた民法第632条は比較的わかりやすいと思います。

 具体的に、改葬、墓じまいの墓石解体工事・墓所整地工事にあてはめて説明すれば「改葬元、墓じまいするお墓の使用者が、「お墓の墓石を解体して、墓地を整地して更地にする」という内容の仕事を石材店さん、石屋さんに依頼し、その報酬、費用を支払うことを契約することで成立します。

 もっと簡単に言ってしまえば、お墓の使用者が、改葬元・墓じまいするお墓の墓石解体工事・墓所整地工事を石材店さん、石屋さんに依頼し、報酬を支払う契約です。

請負契約の報酬の支払時期は法律・民法で定められている

 このように、改葬、墓じまいの墓石解体工事・墓所整地工事は法律上、民法上、請負契約でした。

 この請負契約の報酬の支払時期、つまり、「仕事を依頼した人が、仕事を行った人に報酬を支払う時期」についても法律、民法で定められています。

 請負契約の報酬の支払時期について定めた法律、民法(1896年(明治29年)法律第89号)第633条を見てみましょう。

民法(1896年(明治29年)法律第89号)

第633条
 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第624条第1項の規定を準用する。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#2701

 少し法律が難しくなってきました。

 請負契約の報酬の支払時期について、法律、民法は2つに分けて規定しています。

 まず一つ目は「何かを製作するタイプ」の契約です。

 このようなタイプの請負契約では「目的物の引渡しと同時」に報酬を支払わなければならないとされています(民法第633条本文)。

 このページとは直接は関係しませんが、お墓を建てる場合、建墓するときの請負契約はこの規定が適用されます。

 つまり、お墓を建てる場合、建墓するときの請負契約は、「できあがったお墓を注文者に引渡すとき」に報酬、費用を支払うこととされています。

 請負契約の二つ目が「何かを製作するタイプ以外の契約」です。

 改葬、墓じまいの墓石解体工事・墓所整地工事はこれに該当することになります。

 このタイプの契約の費用の支払時期は「民法第624条第1項の規定を準用する。」とされていますので、準用されている第624条第1項の規定を確認してみましょう。

民法(1896年(明治29年)法律第89号)

第624条第1項
 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#2662

 これは、雇用契約について定められた条文です。

 条文の内容はご覧いただけばご理解いただけると思います。

 「契約した内容が終わった後でなければ、報酬を請求することができない。」という内容です。

 つまり、改葬、墓じまいの墓石解体工事・墓所整地工事は、「工事が終わった後で無ければ報酬を請求することができない。」と法律で定められています(民法第633条ただし書、第624条1項)。

改葬、墓じまいの墓石解体工事・墓所整地工事の費用は、工事が終わった後に支払うようにしましょう

 以上のように、改葬、墓じまいの墓石解体工事・墓所整地工事は、「工事が終わった後で無ければ報酬を請求することができない。」と法律で定められています(民法第633条ただし書、第624条1項)。

 法律で定められている以上、改葬、墓じまいの墓石解体工事・墓所整地工事の費用は、工事が終わった後に支払うようにしましょう。

 たまに、改葬、墓じまいの墓石解体工事・墓所整地工事の前に費用の支払いを請求する石材店さん、石屋さんがありますが、この請求は法律上の根拠はありません。

 ただし、この法律・民法の規定は契約当事者間の合意で変更できる規定です。

 このような規定のことを法律用語で「任意規定」と呼びます。

 しかし、わざわざ民法で規定されている法律上のルールを変更する必要性は無いように感じます。

 さくら行政書士事務所では、改葬、墓じまいの墓石解体工事・墓所整地工事の前に費用の支払いを請求する石材店さん、石屋さんに工事を依頼することはお勧めしていません。

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